主な登場作品
「血の十字架(ブラッディ・クロス)Episode03」
かつて主人(男性。父親のように敬愛していた)を呪詛悪魔に眼の前で惨殺されたという過去を持つ。一緒に重傷を負いながら、一命をとりとめた彼は意識を取り戻すと、狂乱の中、血の涙を流して、必ず仇を取ることを主人の遺骸に誓う。そして、その証として自ら自分の額を十字に切り裂き、また、主人の遺体から流れ落ちる血をすくって飲んだのだった・・・
主人に対して直接害をなしたわけではなかったが、その行為によって、その時以来、彼の翼もまた赤く染まった。だが、白鷺のサキのような恐ろしさの中にも人を惹きつける悲しい美しさのある色とは違い、ただ見た者(呪詛悪魔たちであっても)が目を背けないではいられないような不吉さと禍々しさに満ちた、真紅というより、底光りするような赤黒い翼である。だが、本人はそういう今の自分のありさまについてなど、全く気にしてはいない。
主人を殺された彼はそのまま独力で仇を探し、ようやく見つけ出しはしたものの、相手は当時の彼にとっては格上の相手で、返り討ちに遭い、またしても命を落としかける。しかし、執念で再び死の淵から蘇り、またも追い始める。
・・・そして数年後、再び仇の前に立った。ところが、その頃には、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた中で、彼の力の性質もその程度も異様なまでの変容を遂げており、かつての怨敵は為すすべもなく、死より悲惨な最期を遂げることとなった。
だが、彼の復讐はそれで終わりはしなかった。主人の仇を報じるため、呪詛悪魔という存在を一人残らず消し去ることを決意していたからである。かくて、いつ果てるともしれない血塗られた彼の旅が始まった・・・
だが、天界の意向とは全く関係なく、単独で呪詛悪魔たちを惨殺していく彼の存在は、ほどなくしてロイの知るところとなる。本来なら、デッドエンジェルとして処理すべきところを、その稀有かつ強力無比な能力に利用価値を見出したロイはひそかに接触、呪詛悪魔の情報を与え、彼の行動に便宜を図る代わり、秘密裡に依頼した呪詛悪魔を葬らせるという取引きをする。同時に彼の存在が他に知られぬよう手を打って、現在に至っている。
敵を前にした時、彼、カンディードの額の傷は赤い光を帯び、解封を念じるまでもなく、力の奔流に耐えかねた黒い特製の封冠(後述)がはじけとんで、青白い炎を上げ灰となって崩れ去る。そして、あらわになった額の傷からは一筋の血が滴り落ちる・・・それこそが相手にとっての死刑宣告である。
特殊装備:特製封冠―『禁』
大天使たちがつけているのと基本的には同じだが、今彼のつけているそれは、力の封印の働きを極限にまで高めたもので、他の者では装着しただけで絶命しかねない。
当初彼のためにも封冠がひそかに調整されて与えられたが、力の増大のあまりの速さに調整では間に合わず、新たに特製のものがいくつか製作された。それでも結局、彼の力を完全に抑えきれるものはできなかった(実はその裏では、ロイが彼を〝飼い馴らす〟ためにこれらの封冠にさまざまな細工を施したりもしていたのだが、最終的にはこちらもことごとく失敗)のだが、現在ではもはやその必要もなくなった。だが、最後に作られたこのタイプを今でも使い続けている。
戦う時には常に持てる能力をすべて解放した状態であり、また戦った後の反動を考慮する必要のない現在の彼(後述)にとっては、封冠本来の役割であるリミッターやセーフティとしての意味はほとんどない。それでも彼が身につけているのは、ロイやその手の者たちと連絡を取る通信器具としてと、剣(後述)と同じに普段から自分に負荷をかけるためである。
使用武器:聖剣の影―『裏』
日本刀ふうの形をしている。天界を守護する幾本かの聖なる剣が作られた際、その〝正の力〟を高めるために、それらの対になる影として、負の要素を押し込めて同時に生み出された〝裏〟の一振り。〝表〟の真の聖剣ともまた異なったさまざまな力を秘めていると思われるが、かつて〝裏〟を使いこなした、いや、そもそも実際に使った者など一人として存在しなかったため、詳細は明らかでない。本来、これら聖剣の〝裏〟は作られると同時に人知れずいずこかに封印される。聖属性を持つ天界の住人は本来、手に取ることすらない。普通の守護天使では触れるだけでその存在が危うくなり、高レベルの大天使や神々も、言わば〝汚れ〟に当たるもののため、扱いは様々な力をもってなし、可能でも直接触ったりするような物ではない。彼にしても身に帯びることは未だ少なからぬ負担になるはずだが、自分の力をさらに高めるため、あえて携行している。なお、彼の手にするものが何という聖剣の影か、また、いかにして彼がそれを手に入れたかは不明。
必殺技:極めし技―『斬』
ある人間の剣士に基本の教えを受けて、彼がその後自分なりに会得した技。敵の身体を両断した、その数瞬後に血が噴き出し、刀身には血の一滴たりともつかないという、神速かつすさまじい切れ味の剣技。
だが、ただの剣を使っている時からそれほどの威力だったものが、『裏』を得た現在では、さらに超絶的なまったく次元の違う力を発揮するようになった 。
特殊能力:戦気吸収(フォースドレイン)―『劫』
いくつもの凄絶な戦闘の中で、常に自分の限界を超えて戦ってきた彼がいつの間にか自然身につけた力。戦いの中の、その〝戦いの気〟そのものを自らのエネルギーに変え、無限に近い体力を保つ。また体力のみならず、気力等も尽きることがないため、精神的な意味でも疲れを知らず、いつまででも戦っていることができる。さらに戦闘中、もし大きな傷を負ったとしても、みるみるうちに治っていき、痕すら残さずすっかり消えてしまう。(そのため、かつては全身にあった、激しい戦いによる無数の傷痕が現在では全くない。ただし、額の傷だけは例外)戦っている限りは、ほぼ不死身と言える。
主人を喪った当初からすると、今の彼は落ち着きを取り戻して見える。だが、その分、心の底に渦巻く憎悪と復讐心はいっそう強まっていると言える。冷静・冷酷・冷徹に呪詛悪魔たちをひたすら追いつめ、容赦なく処分する。元守護天使でありながら、呪詛悪魔の尖兵となっているデッド・エンジェルたちも同様。なお、どんな相手であっても、処分の方法として殺す以外の発想はないので、魔封瓶などは持っていない。
本来優秀な頭脳の持ち主だが、現在では行動原理のすべてが呪詛悪魔たちを根絶やしにすることに基づいている。そのため、思考に柔軟性を欠く様子が伺える。だが、ロイという人物の性質は見抜いており、全く信用してはない。ロイがただ自分の力を利用しようとだけしていることも承知している(封冠に仕掛けられた細工にも気づいていた)。だが、現在の天界に情報提供その他でロイ以外に彼の役に立ちそうな者は見当たらないため、こちらもロイを利用してやるつもりでいる。
呪詛悪魔への激しい憎悪は留めようがないため、キジのケンやE3の前身を知れば、彼らにも牙を剥くことは充分考えられる。問題になるのを懸念し、現在はロイがその情報を巧妙に遮断しているが・・・。だが、七曜の勇者――>エレメンツの勢力の拡大を危険と判断した際には、あえて情報をリークすることで彼をけしかけ、その力を削ぐこともロイの選択肢の中に入っているかもしれない・・・
現在までにすでにいくつかの呪詛悪魔のグループを単独で殲滅し、その際エリートタイプの呪詛悪魔、それも魔神レベル二桁以上の者までも何人か斃しているとも言われる(公式記録には残らず。ただし、ロイの私的なデータベースとしてはこの限りではない)
さまざまな特殊能力だけではなく、基本的な戦闘力そのものも日々増大を続けている模様。この彼の力の変質とその異常な増大の原因がどこにあるのか、懸命の調査にも関わらず、ロイにすら全くつかめていない。もっとも、本人にも分かってはいない・・・
決めぜりふ:「消えろ、きさまらに来世(つぎ)はない・・・!」
(『裏』を手にする前から、彼に殺された呪詛悪魔は魂が崩壊消滅し、二度と再び輪廻の輪に戻れてはいないことが確認されている)