その日は、なのは門下生の合同同窓会であった。
なのは門下生にはカルテットや、はるこを始めとする「めいどの世界第8サポートチーム」員や、あやを始めとするD.F.4人娘がいる。そういったメンバーがその日、初めて会うこととなったのである。(特にD.F.4人娘とは目標とする進路が別なのでクラスも別だった)
あや「あなたがはるこさんですか。初めまして。」
はるこ「いえいえ。こちらこそよろしく。」
ひとみ「かつみさんって、アリって感じがしませんよね。」
かつみ「そう?」
そういった会話が交わされ、和気藹々とした雰囲気の中で同窓会は進行していった。
そんな中…
はやか「どうも…落ち着きませんわね…。」
はやかは一人そわそわしていた。どうもこういった会合が苦手なようであった。というわけではやかは会場を一人うろうろしていたのであった。
そして…
はやか「えーと…あっ!」
はやかは誰かとぶつかった。
なたね「わっ!」
はやか「ご、ごめんなさい!」
その「誰か」とはなたねであった。
なたね「大丈夫ですか?」
なたねははやかに優しく声をかけた。その瞬間である。
(ど…どうしたのでしょうか…?この気持ちは…。)
はやかは急に原因不明の気持ちの高揚感に襲われた。
(何でこんなに胸がドキドキと…。)
はやかの胸は高鳴った。
なたね「あ…あの…。」
はやか「は…はい!」
なたねに声をかけられ、はやかはようやく正気に返った。
なたね「ボクはなたねと言います。あなたは?」
はやか「あ…あの…はやかです…。」
なたね「歳は?」
はやか「14…です…。」
なたね「じゃあボクのほうが一つ上ですね。」
こんな感じのあまり面白みのない会話がしばし交わされた後…
なたね「じゃあ今日はこの辺で。」
はやか「は…はい…。」
2人は別れた。
そして、同窓会が終わった後、はやかはある一つの思いにとらわれていた。
(なたねお姉さま…。かわいい…。なたねお姉さまの全てを自分のものにしたい…。)
食事をしても、風呂に入っても、本を読んでもなたねのことが頭から離れないのである。結局、なたねのことが頭から離れないまま就寝時間を迎えることとなった。
その夜、はやかは夢を見た。
はやか「なたねお姉さま…。わたくしはあなたが好きですわ…。」(そう言いながらなたねの服を脱がしにかかっている。)
なたね「や…やめてよ…。ボクが何をしたというの…。」(半泣き状態)
はやか「もう…我慢できませんわ…。いただきますわ…。」
なたね「だ…だめーっ!」
はやか「はっ!」
今まさにはやかがなたねを襲わん、というところで目が覚めた。
はやか「何という夢でしょうか…。」
結局はやかはそこから朝まで一睡もできなかったのであった。
(一体どうしたのでしょうか…。まあいいですわ。しばらくしたら落ち着くでしょう。)
そんなことを考えていたはやかであったが、事態ははやかの思った通りにはならなかった。
起きている時はなたねのことが頭から離れないし、寝ているときは寝ているときでなたねがらみの夢ばかり見てしまう。しかもその内容は日に日に過激な方向へとエスカレートしているのであった。
(このままではわたくしは変になってしまいますわ…。)
思い余ったはやかは、「めいどの世界第8サポートチーム」のリーダーであるはるこに相談した。
はやか「…という訳なのです。どうしましょう…。」
はるこ「うーん…。」
はるこはしばし悩んだ様子を見せていたが、やがて何か思い当たるところを話し始めた。
はるこ「あ、そうだ。はやかはなたねちゃんの前世を知っているの?」
はやか「いえ…。知りませんが…。」
はるこ「そうか。やっぱりそういうことね。」
はやか「え?」
はるこ「なたねちゃんの前世はアブラムシなのよ。」
はやか「ええ?」
はるこの思わぬ一言にはやかは驚いた。
はるこ「テントウムシはアブラムシを捕食するでしょう?だからこうやって守護天使となっても前世の記憶が作用してなたねちゃんのことを襲いたくなっちゃうのよ。多分。」
はやか「そうでしたか…。」
はやかは納得した様子を見せた。しかし、その納得の表情はすぐに邪悪な微笑みになるのであった。
はやか「そうと分かれば話は早いですわ!それではまた!」
はるこ「あ!ちょっと!」
はやかはすぐにどこかへ去って行った。
一方こちらはなたねである。はやかがその悩みを解決した日を境に、なたねはあることに悩むようになった。
なたね「あれ?何か誰かに見られているような気がするんだけど…。」
自分の行動が誰かに見られているようなのである。特に着替えや入浴といった無防備な体勢になる時にその傾向が顕著であった。
もうお分かりであろう。なたねははやかにストーキングされるようになったのである。
(なたねお姉さま…。いつかあなたを「食べて」見せますわ!テントウムシの誇りにかけても!)
どうやらはやかの悩みは間違った方向に解決されたようであった。
おわり
前世の関係を膨らませてみた作品です。特に後半はけっこう楽しく書けたと思います。
そう言えば、他人のことを「お姉さま」と呼ぶのは「夢カル」では初めてのケースですね。