あすか「待って下さい!」
あすかの声が響き渡った。
女王「な、何者?」
ひとみ「あすかさん?」
心配したあすかが駆けつけたのである。そしてあすかはなぜか大きな風呂敷包みを背負っていた。
あすか「ひとみちゃん…今度は…わたしが…説得します…。」
そう言って、あすかは風呂敷包みを地面に下ろし、その中身を広げた。中身は、ホイホイやスプレーといった大量のゴキブリ退治グッズであった。
女王「これは…?」
あすか「わたしはゴキブリの生まれ変わりです。退治されるものの辛さや切なさは、わたしはよく知っています。見てください。ゴキブリを退治するための道具がいかに多いかを。わたしたちゴキブリはずっと虐げられ、嫌われてきたのです。」
あすかは続けた。
あすか「しかし、わたしは人間の優しさに触れることによってこうしてまっとうに転生することができました。ゴキブリにも…誰からも嫌われているゴキブリにもそれができたのです。あなたたちアリにできないことはありません。」
あすかの目には涙がにじんでいた。
あすか「それに、ひとみちゃんやさとみちゃんは女王のことが好きなのです。その想いを分かっていないわけではないでしょう?」
女王「う…。」
とここで、あすかは土下座をした。
あすか「お願いです!ここはわたしに免じてひとみちゃんやさとみちゃんを許してあげて下さい!そして、もう悪いことはしないで下さい!」
あすかは必死で頼み込んだ。そして、その熱意は女王に通じたようであった。
女王「分かったわ。あなたがそこまで言うのなら、もうこんなことはしません。」
ひとみ&さとみ「女王様…。」
女王「しかし、わたくしはこれまでにも同様の行為をしてしまいました。わたくしが今までしてきたことの罪は消えません。それを償うのが女王たるわたくしの使命です。」
女王は何かを決意したような表情となった。
そして、懐から何かを取り出した。それは何と、短刀であった!
あすか「な、何をする気ですか!」
女王「娘たちは悪くありません!悪いのはわたくし一人です!死してお詫びをいたします!」
さとみ「女王様!」
ひとみ「や、やめて下さい!」
女王は切腹を試みたのだ。そして、女王のお腹に短刀が突き立てられようとしたまさにその時!
ガシッ!
女王「?」
女王の手に鎖が巻きついた。そこで登場したのは…。
ともみ「ああ、間に合った…。」
ひとみ「あなたたちは…。」
さとみ「お姉ちゃん、知り合いなの?」
ひとみ「この子たちは修業時代の友達で今D.F.にいるんですよ。」
あや「そう。地上で怪しい動きがあるという情報を知ったから駆けつけたわけ。…しかしすごいわね、この状況は…。」
D.F.4人娘である。彼女たちもまた少女軍団を止めに来たのであった。
かつみ「話は聞かせてもらったわ。女王、あなたの心意気は見事ね。でも切腹は絶対しちゃだめよ。」
女王「え…?」
かつみ「あなたはひとみやさとみの想いが分からないの?ひとみやさとみは、いや娘たち全員が女王を好きなの。あなたが死んだらみんなはどうなるの?」
かつみの言葉に女王は「はっ!」となった。
かつみ「これからいくらでもやり直せるよ。あたしたちも応援するから、ちゃんと罪を償って更生しようよ。」
女王「う…う…。」
女王は感極まったのかついに泣き出してしまった。
かつみ「さあ、『めいどの世界』へ行こう。そこで罪を償おうよ。」
女王「分かったわ…。さあ、皆さん、行きましょう。」
こうして、女王とその娘たちはD.F.に率いられ「めいどの世界」へ行くこととなった。
そして、別れ際、女王はひとみとさとみに言葉を残した。
女王「ひとみとさとみ…でよかったわね?」
ひとみ「はい。」
女王「あなたたちは本当にいい友達を持ちましたね。そして…。」
さとみ「え?」
女王「さっきはひどいことを言ってごめんなさいね。あなたたちもわたくしの大切な娘です。」
ひとみ&さとみ「女王様…。」
3人はそっと抱き合い、別れを惜しんだ。
女王「では、行ってきます。」
ひとみ「がんばってください!」
さとみ「わたしたちも待ってます!」
こうして少女軍団とD.F.は去っていった。
ひとみ「行ってしまいましたね…。」
さとみ「みんな、大丈夫かなあ…。」
あすか「大丈夫…ですよ…。信じ…ましょう…。」
ひとみ「そうですね!」
さとみ「うん!」
ほっとした気持ちと希望を抱いた3人であった。
おわり
女王を出すのは結構昔からの願いでした。
ちなみに、女王の年齢が「少女」になっているのは転生期間の都合です。女王はひとみより後に死んでいるのです。
それからもう一言付け加えるなら女王のビジュアルモデルは「マリア様がみてる」の「小笠原祥子」です。