夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.11「都会の温泉」

ある日、ひとみが光彦のもとにあるチラシを持ってきた。

ひとみ「ご主人様、これは一体なんですか?」

見ると、このようなことが書かれていた。

(クアハウス健康本日オープン!開店後三日間入浴料半額!)

光彦「これはね、スーパー銭湯のチラシだよ。」

いつしか、みゆう、あすか、まゆりの三人も光彦のもとに来ていた。

みゆう「『スーパー銭湯』って何?」
光彦「すごく大きなお風呂がある所だよ。」
あすか「すごく…大きな…?」
光彦「そう。家のとは比べものにならないよ。」
まゆり「面白そうですわね。」
光彦「どうだろう、半額なんだし今日行ってみようか。」
まゆり&あすか&みゆう&ひとみ「賛成!」

 

かくして、四人は「クアハウス健康」に向かった。
男女に別れる時、四人は光彦に注意を与えられた。

光彦「いいかい、上がるまで僕とみんなとは別々になるわけだけど、常識をわきまえて
   迷惑をかけないように行動するんだよ。いいね?」
まゆり&あすか&みゆう&ひとみ「はい!」
光彦「よろしい。あ、それから入る前には体を洗うんだよ。」

こうして、カルテットの四人(まあ光彦もだが)は風呂に入ることとなった。
服を脱いで風呂の施設に入った四人がまず驚いたのは、その大きさであった。
何しろ、大きい風呂の他にもうたせ湯や泡風呂などさまざまな風呂がお出迎えをするのである。いずれも四人にとっては初めて見るもののオンパレードである。

ひとみ「大きいですねー。」
みゆう「すごーい!」
あすか「想像…以上です。」
まゆり「早速入りましょう。」

四人はまず大きい風呂に入った。もちろん光彦の言いつけ通りに体を洗った上でのことである。

みゆう「気持ちいーい!」
ひとみ「家では足折り曲げて入っていましたからね。」
あすか「お風呂って…こんなに…気持ちいいものでしたっけ…?」
みゆう「なんか泳ぎたくなっちゃう!」
まゆり「やめなさい、そんな歳ではないでしょう。」

四人は、大きくて広い風呂を充分に堪能した。
しばらくして、四人はあることに気づいた。

ひとみ「露天風呂…?」
あすか「外の…お風呂ですね…。」
みゆう「面白そう!」
まゆり「では行ってみましょうか。」

というわけで、四人は外に移動することにした。

あすか「空が…気持ちいいですね…。」
ひとみ「お空はあたし好きですよ。」
まゆり「このお風呂を考えた人は天才ですわ。」
みゆう「うん、天才!」

そのころ、なんという偶然か、光彦も露天の存在に気づいた。そして、

光彦「よし、外に行くか!」

光彦も露天風呂に向かったのだった。
一方こちらはカルテット。初めての露天風呂を堪能する四人の耳に聞き慣れた声が飛び込んできた。

光彦「うーん、やっぱり露天はいいねえ。」

紛れもなく光彦の声である。
そこで解放的な気分になっていたみゆうは思わず、

みゆう「ご主人様ー!」

と声をかけてしまった。
もちろん、すぐに他の仲間から「恥ずかしい」と止められた。しかし、この「ご主人様」という言葉は他の男性客に大きなインパクトを与えた。

客1「ご主人様ぁ?」
客2「新手の援交かな、あれ。」

これらの反応に、光彦は

(バカ…。)

と思いつつ湯船に沈むしかなかった。

再び話をカルテットに戻そう。
露天風呂から中に戻った四人が目をつけたのは、うたせ湯であった。

ひとみ「下に入るんですね。」
まゆり「やってみましょう。」

初めはおとなしく打たれていた四人であったが、やがてひとみがあることを言い出した。

ひとみ「皆さん、こういう時にやることを知っていますか?」
みゆう「知らないけど、何?」
ひとみ「手を合わせて、呪文を唱えると面白いんですよ。ブツブツブツブツ…。」
あすか「…なるほど、ブツブツブツブツ…。」
みゆう「ブツブツブツブツ…。」
まゆり「ブツブツブツブツ…。」

こうして、四人とも「修行僧ごっこ」を始めてしまった。
ハイティーンの美少女四人がこのようなベタなことをするのは珍しくも恥ずかしいことで、他の客の失笑を買った。
だが、幸か不幸か、四人はそのことに気がつかなかった。
そしてうたせ湯にも飽きた頃、四人はこの手の施設の定番ともいえる設備の存在に気づいた。
そう、サウナである。

みゆう「サウナ?」
ひとみ「あの新陳代謝を良くするという?」
あすか「フィンランド…生まれの…?」
まゆり「裸になって語り合う?」

四人は、ゆずのアルバム「ゆずモア」の「GO★GO!!サウナ」を聞いたことで、サウナに対してかなり期待したイメージを抱いていた。
というわけで、四人は迷わずサウナに入った。
当然そこは熱帯以上の暑さである。四人は少しびっくりした。だが寒いよりはましである。

みゆう「暑いね。」
ひとみ「でもこの汗がいいんですよね。」
あすか「上がったら…ビール飲みたいです…。」
まゆり「ではとりあえず楽しいお話をみんなでしましょうか?」

四人は雑談を始め、しばし話を楽しんだ。
そして、汗を流して、大きい風呂に入った後に浴場を出た。

そのころ、光彦はもう上がっていた。

(遅いなぁ…まあ楽しんでるようなのはうれしいけど…。それにしても「神田川」、あれはうそだね。)

などということを考えていると、四人がやってきた。

みゆう「ご主人様ー!」
まゆり「遅れて申し訳ありません。」

四人は、ほんのり桜色に染まった身体を浴衣で包んでいた。そこには、和装をしないひとみ、みゆう、あすかだけでなく、いつも和装をしているまゆりにも新鮮な可愛らしさがあった。
光彦は、そんな四人を見て顔が赤くなった。

みゆう「ご主人様、顔真っ赤だよ。」
ひとみ「お風呂に入りすぎたのですか?」
光彦「いや…それより、ご飯食べて行こうか。」
あすか「ご主人様…わたし…ビールを…飲みたいです。」

思いもよらぬ一言に、光彦は面食らった。

光彦「え、ビール?」
ひとみ「あたしも飲みたいです。」
まゆり「サウナから上がったらビールを飲むものなのでしょう?」
みゆう「そう『ゆず』の人たちが言ってたよ!」

光彦は、

(ああ、あれか…。)

と思った。そして、四人が飲酒した時の惨状を思い出し、やんわりと断ることにした。

光彦「だめ。みんな、ビールはお酒なんだよ。」
ひとみ「え?」
光彦「君達お酒飲むと性格変わるじゃん。だからだめ。」
みゆう「えー、がっかり。」
光彦「その代わり、食べ物は好きなもの何でも注文していいから。」
みゆう「本当?」
まゆり「ありがとうございます。」
光彦「いや、分かってくれてうれしいよ。」

場が収まって光彦はほっとした。そしてみんなで食堂に向かった。


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