「……ところで……あなた……誰……?」
「そうよ、誰なの?」
サキとセリーナがレオンの背負う男性に問い掛ける。
すると、その男性はレオンの背中から滑り降りる。
サキとセリーナの前まで歩み寄ると、胸を張って2人を見上げるように答える。
「ふふんふんふん~♪ ワシはエイジ、鷲のエイジじゃ☆ よろしく☆」
その鼻歌(?)を歌いながらの駄洒落のような自己紹介に、思わず絶句してしまったサキとセリーナ。
レオンは溜め息をつきながら、連れて来たあらましを説明する。
※先刻の回想シーン
「ん? 誰だ!?」
レオンがスナイパーライフルを構えている場所、そこに昇って来る気配を感じた。
レオンは振り向きざま、懐から拳銃を取り出して構える。
が、その者は驚いたように両手を上げ、敵意が無い事を示した。
「おっと撃つな、味方じゃよ☆」
その者が守護天使である事を認め、構えた拳銃を下ろす。
「失礼した。確か……鷲のエイジ、でしたな。あんたが来たって事はもしかして……」
「そうじゃ、メシア様からの伝言があるぞい。例の作戦の準備が整ったそうじゃ」
「意外と早かったな……七曜の力を持つ者……」
「後はお主らだけじゃ。最後まで残っていたロックもサファリも、D.F.決死隊のかつみ・ともみ・あや、そして隊長のギィス、全員が無事脱出に成功したそうじゃ」
「そうか。ようやく撤退命令が来たか。さて……」
レオンはスナイパーライフルを担ぎ上げると、近接戦闘の為にサブマシンガンにマガジンを装着し、弾倉に弾丸を送り込む。
「ちょぉっと待ってくれんか? ワシもテレポートで一緒に連れて行ってくれんかのう?」
「一緒に?! 俺は今から最前線に行かなければならないんだ……仲間を撤退させる為に」
「そんな事は分かっておる。大丈夫じゃ、ワシも一緒に連れ帰って欲しいだけじゃ。
駄目、かのう……全く薄情なもんじゃ……これだから最近の若いやつは……か弱い老人を戦場に放り出すとは……」
ここまで来ておいて誰がか弱いだ、とレオンは出かけた言葉を飲み込む。
そして、根負けしたように言った。
「分かった。俺の背中に掴まっていてくれ。だが……危険だぞ。それは覚悟してくれよ」
※回想シーン終了
「……と、まあこんな訳だ。だからあの時、援護射撃が出来なかったんだ」
「そうじゃよん☆ あ、ワシはみんなの所に帰るから、君達も頑張ってね~☆」
エイジはそう言い残すと、老人とは思えない素早さで去って行った。まるで風のように……
「結局、何だったの? アレ?」
「頼むから俺に聞かないでくれ……」
セリーナの呆気に取られたような声とサキの唖然とした表情に対し、レオンは疲れたように答えるだけであった。
「……ま、まあ……あまり突っ込まないでおくわ。わたくしは今から司令部に行かなくてはならないから、あなた達は作戦開始まで休んでいて」
セリーナは作戦の調整の為だろう。大急ぎで司令部に出頭していった。今の事を一刻も早く頭の中から追い出したかった、というのもあるかもしれないが。
一方、気を取り直したサキとレオンは、言われた通り休憩所へ向かって歩いていく。と、この二人に背後から声を掛ける者がいた。
「……サキ、レオン、お前達にやってもらいたい事がある」
サキとレオンは神殿の廊下を歩いていた。ある人物を求めて。
二人は、ある事を命令されたのだ。……そんな博打のような事を実行するのは躊躇われたし、しかも二人のポリシーに反していたのだが……命令であっては仕方が無い。
「なあ、大丈夫か?」
「……それは、今からやろうとしている事……?」
「お前の体調もだ。ちゃんと休んでおいた方が良いんじゃないか?」
「……気遣ってくれるのは嬉しいけれど……でも今はそんな事を言ってはいられない……それに……『臆病者・半端な覚悟では足手まといに、不幸になるだけだ。いずれ彼の守護天使達をも巻き込んで』……確かにこの言葉にも一理あるわ……だから……もし『彼』がそんな人間だったら……そんなのに頼らなくてはならないようでは……滅亡も必然……」
「おいおい、滅多な事を言うなよ。『滅亡も必然』だなんて。しかし……ロイ司令は何だってこんな試すような事を……人間がそんなに信用できないのかね? まあ、司令の事はどうでもいいが」
そこに彼がいた。
彼の足取りから感じられるのは、戸惑い……責任感と恐怖感との間で思い悩んでいる
ような、自分にのしかかる重圧に必死に耐えているような、そんな様子が見て取れた。
「……おびえているわね……」
サキが声を掛けると、その人間の男性……山下真吾は驚いた様子で体を震わせ、慌てたように振り返った。
「あ、あなた達は?」
真吾が二人に尋ねる。
「……私は……白鷺のサキ……」
「俺は伝書鳩のレオンだ。よろしく頼むぜ」
......To be continued OtogiWars vol.3