「・・・これで5匹目、ですね」
目の前で泥のように溶け、消滅していく<化け物>だったものを見ながら、ナギサは呟いた。
彼女とその主が<化け物>を葬ったのはこれが初めてではない。今月に入って5匹目だ。
目も耳も鼻もない異形の怪物。夜に蠢き、人を喰らうモンスター。
そして、この怪物には、もう一つの特徴があった。
襲われていた少女を介抱するナギサへと問いかける。
「仕留めた、ってわけじゃなさそうだな」
「はい。たぶん、本体じゃないと思います」
やっぱりか、と呟いて、<化け物>がいた場所へと目を向ける。最後の泥が消滅するところだった。
<化け物>は、何度でも復活する。復活までにどれだけの時間を要するかはわからないが、頭を吹き飛ばしても、胴に風穴を開けても、何度でも蘇る。
「不死不滅、っていうより、使い魔の一種・・・端末みたいなもんか?」
「だとしたら、大本をどうにかしないと、きりがないですね」
<化け物>を統率する何者かを倒さなければ、何度でも現れる。
今のところは確たる証拠もない仮定だ。最初から同じ<化け物>が複数いるだけの可能性もある。復活している、というのは恭一たちの勘違いということもあり得るのだ。
だが、恭一は前者だろうと結論付ける。証拠はないが、彼の勘がそう告げている。
空を見上げる。闇の中煌々と輝く月を見上げて、呟いた。
「ああ、くそ。厄介な話になりそうだ」