【天使像が、覚醒しはじめたようですね】
「ええ、美月の記憶の再生も、ついにこの段階にまできましたか」
【真純の父親……彼はやはり……】
「ええ、やはり彼は普通の人間ではなかったようです。他者の魂を石の像に宿らせるなどという、芸当ができたとは……」
【美月だけでなく、真純の記憶の再生も、本腰を入れてかからなければならないようですね】
「真純は何も知らないかもしれません。父親がどうしてあのような人間なのか。元からそうだったのか、あるいは途中から変貌したのか」
【では、藤原哲本人の記憶を掘り起こす必要がある、ということですか。できますか?】
「祐一に聞いてみましょう。藤原哲は現在、すでに亡くなっています。彼の霊を捕まえることができれば……」
【よろしく頼みます。ラエル。今のところ人間界と天界の命運の全ては、貴方と祐一に掛かっているのですから】
「私だけではありません。ティコとロック、そして……美月の手に、ね」
【ティコ……今、彼に第一の難関が降りかかっています。彼一人の手で、退けられるでしょうか】
「彼には私の力の一部を与えています。心配はしていません」
【フェルジーンとしての力ですね。貴方のその力がなければ、ゼフィルスの封印具によって封じられた美月と真純の記憶の扉をこじ開けることもできなかった……。あれほど疎ましかった力ですが、ものは使いようということですね】
「ペンダントが美月の手に戻ったことも大きいですね。二人の記憶再生の触媒として、あれは最適でした。さあ、回想は終わりにしましょう。次は、現在に目を向けなければ……」
【ティコ、ロック……うまくやるのですよ】