きよく!ただしく!!

呪詛悪魔編 第八話「目覚めし力」

千田「僕の実家は古くから道場をやっててね・・・
    僕もちいさなころから竹刀を握り、大人に混じって稽古をしてた。
    昔は楽しかったんだ、やればやるほど強くなって
    僕の何倍もあるような大人を倒した時なんかすっごく嬉かった。
    でも、中学3年生のころ、事件を起こしちゃったんだ。」
恵「事件?」
千田「その頃大好きだった女の子がいてね。
    三つ編みの似合う、すっごく可愛い子だったんだ。
    その子が学校の不良グループのリーダーに
    しつこく付きまとわれてて困ってたんだ。
    僕はそのリーダーに、彼女に近づかないように言いに行った。
    でも、彼はそんなこと聞いてくれず、逆に僕に殴りかかってきた。
    僕はとっさに持っていた竹刀で応戦した。
    そしたら、そのリーダー大怪我しちゃって救急車で病院へ・・・」

マグカップをもつ手に力がこもる。

千田「相手が不良だったとしても僕のやりすぎだった。
   それ以来、僕は剣を捨てた。
   怖かったんだ・・・僕のこの手に人を殺す力があると思ったら・・
   どうにかなりそうだったんだ・・・・」
恵「千田君・・・・
  でも、それってむやみやたらに振り回したんじゃないんでしょ?
  その女の子を助けたい、その一心で話し合いに行って
  やむを得ずそうなっちゃったんでしょ?
  千田君は悪くないよ、絶対。」
千田「恵ちゃん・・・・・・」
恵「それに今日だって、あたし達を助けるために・・・・・
  千田君の力って、いい力だよ。
  人を助けるための・・・・だから、元気出してよ。」
千田「・・・・・ありがと。」

マグカップをテーブルに置き、再び窓の外に目をやる千田。
降り続いている雨を見ながら
千田は昔父親から言われた言葉を思い出していた。

千田の父『善行、私達が伝えようとしている千田一心流は
      人を倒す剣ではない。人を救う剣だ。そのことを忘れるな。』

幼き日の父の言葉。
あの頃はなにを意味するのかわからなかったが、今ならわかる気がする。

千田(でも・・・・本当にいいんだろうか・・・)

答えが見つからず、千田はその日なかなか眠れなかった。

そんな千田の気持ちを知ってか知らずか、
雨はただひたすら降り続いていた。


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