きよく!ただしく!!

呪詛悪魔編 第三話「頑張れきよちゃん♪大運動会!!」

パァン!パパァ〜ン!!!

ぬけるような青空に恵まれたとある日曜日。
今日は千田達の住む町内会主催の運動会が開かれている。
ちょうど今、成人男子による徒競走が行われている。

きよ「おにぃ〜ちゃぁ〜〜〜ん、がんばれぇ〜〜〜!!!」
恵「千田くぅ〜〜ん、もっとスピードあげてぇ〜〜!!!!」

きよと恵の黄色い声援が飛ぶ。
しかし当の本人はそんなこと聞いている暇がない。

千田「ハァハァハァ・・・・」

結果、6人中5位。散々な結果であった。
参加賞の洗剤をもらい、トボトボと恵達のところに戻る。

千田「ハァハァ・・・・あぁ〜、辛かった。」
恵「だらしないわねぇ。
  あのメンバーの中で一番若い君がそんなんでどうすんのよ。」
千田「そうは言ってもさ・・ハァハァ・・・いつもバイトばっかで・ハァハァ・・
   運動する時間なんて・・ハァハァ・・なかったんだから・・・」
きよ「ハイ、お兄ちゃん。冷たいお茶やで。」

コップをさしだすきよ。

千田「あぁ・・・ありがとう。」

コップを受け取り、一気に飲み干す。

アナウンス『続いて、成人女子による借り物競争を行います。
       参加される方は入場門にお集まりください。』
恵「よっしゃ、いっちょやったるか。」
きよ「恵お姉ちゃん、頑張ってや。」
恵「まっかせなさぁ〜〜い。」

意気揚々と入場門に向かう恵。

千田「すごい自信だね、恵ちゃん。」
きよ「なんせ一位やったら、豪華景品らしいもん。
   お兄ちゃんも今度は頑張ってや☆」
千田「・・・・・努力します。」

係りの人「位置に着いて、よ〜い・・・」

パァ〜ン!!
恵達のグループがスタートをきった。
はじめからとばす恵は借り物が書いてあるカードまでは一番だった。

恵「へっへぇ〜ん、ちょろいちょろいっと。さて、なにを持ってくるんだ?」

カードをめくる恵。

恵「イィッ!?」

カードにはこう書いてあった。

『夫、または恋人』

恵(ナ、ナ、ナ、何なのよこのカードは!?)

呆然と立ち尽くす恵。
追いついてきた人たちに次々と抜かれていく。

恵(ど、ど、ど、どうしよ〜〜〜)

困惑する恵に向かってきよと千田が声援を送る。

きよ「おねぇちゃぁ〜ん、ファァイットォォ!!」
千田「急ぐんだ、恵ちゃぁ〜ん!!」

と、ふっきれる恵。

恵「もぉぉぉ〜〜〜、なるようになれ!!」

全速力で千田達の元に走り寄る恵。

恵「千田君、来て!!!!」
千田「へ?」

千田の腕をつかむと一気にゴールに向かって突進した。

千田「わわわわわわわ・・・・・・」

ほとんど引きずられている状態の千田。
結果、見事一位となった。

恵「ハァハァハァ・・・やったわ。」

汗まみれの恵。おそらくそれは走ったからかいたのではないだろう。

千田「ハァハァ・・おめでとう、恵ちゃん。」
恵「ハァハァハァ・・・ど〜も。」
千田「ところでさ、カードになんて書いてあったの?」
恵「ヘッ?!」

とっさにカードを隠す恵。

恵「と・・となりの人。そう、となりの人って書いてあったのよ。」
千田「なるほど・・・だから僕だったんだね。」
恵「そ・・・そういうこと。」

2人の元にきよが走り寄ってくる。

きよ「お姉ちゃん、すっごいやん!!ホンマに一位とるやなんて。」
恵「へへへ・・・ありがと、きよちゃん。」
きよ「よっしゃ、こうなったらうちも頑張るでぇ〜〜!」
千田「へ?きよちゃんも出るの?」
きよ「うん!!次はちっちゃい子のかけっこやから、
   うちも一位とって豪華景品をゲットや☆」
恵「千田君よりは頼りになりそうねぇ。」
千田「・・・・が、頑張ってね、きよちゃん。」
きよ「うん!!」

ガッツポーズをして、入場門に走っていくきよ。

スタートラインに立つきよ。

千田「きよちゃぁ〜ん、がんばれぇ〜〜!!」
恵「ファイト♪ファイト♪きっよっちゃぁ〜〜ん!!」
きよ「よっしゃ、やったるでぇ〜〜〜。」

きよの瞳に炎がもえたぎる。

係りの人「位置に着いて、よ〜い・・・」

パァ〜ン!!
一斉に走り出す。
きよちゃんが一歩前に出る。

千田「やった・・あれ?」

となりを走っていた、きよと同じくらいの男の子がきよを抜く。

恵「うむう、なかなかやるわねあのコ・・きよちゃん、がんばれぇ!!」

きよが抜き返すとまたその男の子が前に出る。
二人のデッドヒートに千田と恵は息を飲む。
ゴールまで10メートル、5メートル、3メートル、そして・・・・

きよ「やったぁ〜〜!!!」

ちょっとの差できよが一位となった。

千田&恵「やったぁ〜〜〜!!!」

手を取り合って喜ぶ千田と恵。

景品を持って二人に駆け寄るきよ。

きよ「やった!やったでぇ〜〜!!うち、一位とったでぇ。」
千田「おめでとう、きよちゃん。」
恵「やるじゃん、きよちゃん。あたしハラハラしちゃったよ。」
きよ「へへぇ〜ん。」

二人に誉められまんざらでもない顔をするきよ。と・・・

男の子「エェ〜ン、エェ〜ン・・・」

振り返ると、さっき最後まできよと張り合っていた男の子が泣いている。
かたわらで母親らしい女の人が慰めている。

女性「元樹ちゃん、しょうがないでしょ。負けちゃったんだから。」

どうやら男の子の名前は元樹(もとき)というらしい。

元樹「だってだって・・僕、一生懸命頑張ったのにぃ〜〜。」

元樹は泣き止もうとしない。

女性「ハァ〜、どうしましょう・・・」

きよが元樹に近づき、景品をさしだす。

元樹「ふぇ?」
きよ「ハイ、うちのあげるわ。」
女性「でも、それはあなたが頑張ってとったものでしょ?」
きよ「ええねん、ええねん。うちにはもう一個あるし。せやから・・・」
元樹「いいの?」

笑顔でうなずくきよ。

元樹「ありがとう!!」

泣き顔が笑顔に変わった。


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