きよただ!!ミステリー劇場

シャーロック・キヨムズの推理日誌 ~紅きドレス~ 第一章「避暑地の別荘」

堂島高原(どうしまこうげん)・・・・
大坂より電車とバスを乗り継いで約4時間の場所であるここは四方を山で囲まれ、夏でも28度前後までしか気温が上がらず、大坂の有名人や著名人にとってはここに自らの別荘を持つことが一種のステータスとなっているらしい。
そんなのどかな避暑地に、あの3人がやってきた。

きよ「うっわぁ〜〜!!めっちゃ気持ちえぇやぁ〜〜ん!!」
恵「ホントねぇ〜〜。あぁ〜〜、いい空気だわぁ〜〜!!」

バス停に降り立ったきよと恵はとても嬉しそうだ。それに比べ・・・

千田「ハァハァ・・・二人とも、少しは荷物持ってよぉ・・・・」

千田は3人分の荷物の入ったカバンを両手に握っている。
避暑地なのに、彼の顔からは思いっきり汗がふきだしている。

恵「何言ってんの。男子でしょ。これぐらいで根をあげちゃだめだよ。」
きよ「それにうちらみたいなカワユイ女の子に重い荷物持たせるなんて
   そんなん無茶やでぇ〜〜〜テヘヘ☆」
千田(なんだか、この話の回を重ねるごとに
   二人のあつかましさが倍増してる気が・・・)
きよ「ところでお姉ちゃん。お姉ちゃんの先輩さんの別荘ってどこ?」

時計に目をやる恵。

恵「バスの時間知らせておいたから、たぶん迎えの人がくるはずなんだけど・・・」
###「あの・・・もしかして伊手元恵さんですか?」

振り返る3人。
そこにはジーンズをはいて、いかにも活発なお姉さんという人が立っていた。

恵「はい、そうですけど・・・」
###「ごめんなさい、ちょっと遅れちゃったかしら?向こうに車停めてたら
   ちょっとてこずっちゃって。あ、重そうな荷物ね。私も持つわよ。」

そういって女の人は重いほうのカバンに手をかけ、なんとそれを軽々と肩に担いだ。

千田「わっ!!・・・あの、大丈夫ですか?」
###「大丈夫よ。いつもはもっと重い荷物持って先生のあと追っかけてるんだから。あ、そうそう、言い忘れてたわね。
   私の名前は有本葉月(ありもとはづき)。布川の秘書兼アシスタントみたいなことしてるの。よろしくね。」
恵「あたし、伊手元恵って言います。こっちは今回荷物持ちとして来てもらった
  千田善行君でその妹のきよちゃんです。よろしくお願いします。」
千田「荷物持ちって・・・じゃあ始めからそのために誘ったの?!
   エスコートがどうとかって言ってたのは・・・・うっ!!」

恵が思いっきり千田の足を踏んづけた。

恵「今のは言葉のあやってやつよ。気にしない気にしない・・・・」
きよ「きよいいます。よろしゅうお願いします。」
葉月「あら、かわいらしいお嬢さんね。『フカワ』のモデルになってもらおうかしら?」
きよ「も、モデルやなんて・・・・・」

照れるきよ。

葉月「さ、先生がお待ちですので早速別荘に案内するわ。」

葉月の運転で車を走らせること30分。青々と茂る木々の中に白亜の建物が現れた。

葉月「あれが布川の別荘よ。あら?」

入り口に一人の女性が立っている。
上下ともに森の中にはあまり似つかわしくないピンク色のかなり派手な服だ。

葉月「先生・・・」

入り口の前に車を止め、葉月は急いでその女性の元へ向かった。

***「有本・・・お客様をお迎えに上がるのにどれだけ時間がかかっているの?」

明らかに怒っている。

葉月「す、すいません・・・」
***「まったく、いつまでたってもあんたって子は・・・もういいからあんたは奥に行って今夜のパーティーの準備をしなさい。お客様は私がご案内するわ。」
葉月「はい!失礼します。」

そそくさと建物の中に入っていく葉月。
それをしばらく目で追って、またこちらに向き直ったその顔は
さっきとは別人のようにやさしい顔であった。

***「はじめまして。私が布川弥生(ふかわやよい)です。長旅で疲れたでしょう?」
恵「い、いえ、そんな・・・・こ、こうやってあの布川先生と会えて・・・・
  疲れなんて・・・どっかいっちゃいましたです。」

珍しく恵が緊張している。その姿を見て微笑む弥生。

弥生「先生だなんて・・・まだそんな偉くなったわけじゃないわよ。」
恵「そ、そんなことないです。先生はうちの学校の誇りですから!」
弥生「ありがと。あなたの作品も何点か見せてもらったけどあなた、いいもの持ってると思うわよ。」
恵「こ、光栄です、先生!!!」
きよ「コソコソ(お姉ちゃん、マジで嬉しそうやねえ。)」
千田「コソコソ(そらやっぱり、憧れの人に誉められたんだもん。)」

コソコソ話している二人のほうに目をやる弥生。

弥生「そちらの二人は?」
千田「あ、はじめまして。今回荷物持ちとしてついてきた千田といいます。」
きよ「うち・・・やなくて、あたしはその妹のきよです。」
弥生「そうだったの。よろしくね。私はてっきりご主人とお子さんかと。」
恵「なっ!!!!!」

恵の顔が急スピードで赤くなる。

弥生「ウフフ、冗談よ。さ、どうぞお入りになってくださいな。」


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