星の導くままに・・

第二話  虫の報せ?星の報せ?

??「いっちゃ〜〜〜〜く!!びくとり〜〜」

元気に駅から駆け出してくる少女が一人。

??「ヒカルさん!あんまり走り回ってはいけません!」

そしてそれをたしなめるように後から駅から出てきた女性がもう一人。

ヒカル「ブ〜ブ〜!マヤ姉ぇ硬すぎ〜〜」
マヤ「いい加減にしましょうね〜、ヒ・カ・ルさん」

にっこり………ゴゴゴゴ……

ヒカル「(ヤバ…マジで怒ってる…)ご…ごめんなしゃい…」

ガタガタガタ……

マヤ「はい、判ればいいんですよ〜、さぁ、ご主人様を早くお探しいたしましょう」
ヒカル「女神様はこの町にいるっていってたけど、この町も結構広そうだし…ご主人様にあえるのかな?」

普段はお気楽なヒカルも、広い町の中から一人の人間を探すことに一抹の不安を感じていた。

マヤ「ヒカルさん、今からそんな調子でどうするのですか?そんなことでは、たとえご主人様にお会いできたとしても、お守りすることなんてできませんよ」
ヒカル「そう…だよね!よ〜し、元気を出して捜索開始〜〜!」

少女はそういって駆け出しガシッ!!………ガシ?

マヤ「ヒカルさん、節度は守って…ネ?」
ヒカル「……ごめんなしゃい」

 はじめまして!ボクの名前はヒカルです、そして一緒にいる人はマヤ姉ぇです、よろしくね。
ボクたち二人は守護天使と言う存在です、守護天使と言うのは、死んだ動物たちがメイドの国で修行をして、生きていた時ににお世話になった、ご主人様のお世話をしたりするために、人間の姿で転生した存在…
まぁ、簡単に言うと鶴の恩返しみたいなものだね。

 ちなみにボクは蛍の生まれ変わりなんだ、15年ほど前にご主人様に飼われていたんだけど、飼育箱のふたに隙間が開いていたときに逃げ出しちゃったんだ。
ご主人様はとっても大事にしてくれてたし、ご主人様のおじいさんやおばあさんもとってもやさしかった…
だけど、やっぱり外の世界に興味があったんだ、だから逃げ出しちゃった。
でもそれがいけなかったんだ、何もわからないまま町の中を飛んでいたら、何かのお店の前にすっごく光ってる物がぶら下がってて、不思議に思って近づいていったら、急にバチッ!!ってなって死んじゃったんだ…
メイドの国で知ったんだけど、あれは光に寄ってきた虫を感電させて殺すものだったんだって…
なんかその思惑に完璧に引っかかって…死ん…じゃったボクって、なんか…すっごく馬鹿みたいだよね…
ぐすっ………えへへ、昔のことで落ち込むなんてらしくないよね!よし!次はマヤ姉ぇの紹介だよ!!

 マヤ姉ぇはミヤマクワガタっていうクワガタムシの生まれ変わりなんだって。
マヤ姉ぇは19年前にご主人様に飼われていたんだって、ボクは会った事ないんだけどご主人様のご両親にも会ったことがあるんだって、ご主人様のご両親はボクが飼われる大分前に行方不明になっちゃったんだって…
人間が死んでからいくところとボクたちがいくところは違うから、生きているのか亡くなっているのかも、よく判らないんだ…
マヤ姉ぇは家事とかもみんな得意だし、すっごく気が利いて、まさしく大和撫子って感じなんだよ。
ただ、怒らせるとすっごく怖いんだ、すっごい怪力だし…ごめんなさい、今の発言は無しで…
でもマヤ姉ぇは何度聞いても、死んだときのことを教えてくれないんだ、聞いてもあまり気分のいいことじゃないから教えないんだって…

 ボクたち守護天使は本来、主である人の下に特殊な召喚陣で召喚されるんだけど、ご主人様のおじいさんとおばあさんが病気に倒れたので、お二人にもよくしてもらっていたボクたちは、ご主人様にお使えする前に、おじいさんたちにご恩返しをするためにもボクたち二人は女神様に頼んでおじいさんたちの元に送ってもらったんだ、ただしご主人様を自分たちで探し出さないといけなくなっちゃったんだけどね。
女神様は「これも修行のうちです」とか言ってたたけど…召喚の契約を書き換えるのが面倒なだけだったりして…にしししし。
そんなこんなで、おじいさんたちの元でご奉仕を始めたんだけど、三ヶ月位たったある日、おじいさんが先立ってしまいました…それから三日後、後を追うようにおばあさんも亡くなりました。
おばあさんは最期に「孫を頼みます」ってボクたちの手を握りながら言ったんだ。
おばあさんに頼まれたこともあるけど、ボクたちはボクたちの意思でご主人様にご奉仕するために、女神様に教えられたこの町にやってきたんだ。

マヤ「ヒカルさん、そんな所でぼ〜っとしてないで、早く探してお会いしないと日が暮れてしまいますよ」
ヒカル「は〜〜い、今いっきま〜す」

そうして二人のご主人様探しが始まりました。
しかし、やはり都会で一人の人間を探し出すことは容易ではありません、一軒一軒家を見て回り、交番で聞いたりもしてみましたが、警察もその地域に住んでいるすべての人を把握しているわけではありません。
二人はそれでもあきらめず、マンションなども一部屋一部屋名前をチェックして回りました。
しかし、二人のがんばりも虚しく何の手がかりもないまま日が暮れ始めました。

マヤ「ヒカルさん、もう日が暮れてきましたし、宿を探しましょうか?」
ヒカル「ボクはまだまだ大丈夫だよ、少しでも早くご主人様に会いたいんだ、だからがんばらなくっちゃ…」
マヤ「あらあら、それじゃあ私も負けてられませんね、私も早くお会いしたいですから」
ヒカル「あ、マヤ姉ぇ、あっちの方、なんか人がいっぱいいるみたいだよ!ご主人様がいるかもしれないし行ってみよ!」

言うが早いかヒカルはネオン街へ駆け出した

マヤ「あ、ヒカルさん、人ごみで走ったら危ないですよ!」
ヒカル「ふっふふ〜ん♪……え?あれ?なに…ここ?」
マヤ「ふぅ…まったく、ヒカルさんはぐれてしまいますよ……どうしました?ヒカルさん」
ヒカル「いやっ!いやだよ!!ここはいやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ヒカルは頭を抱えうずくまってしまいました
マヤ「ど…どうしたんですか?ヒカルさん?ヒカルさん!!」
ヒカル「いや……こ、ここの光はいや…」
マヤ「そういえば、ヒカルさんには光に込められた感情を見る力が…いけない!!こんな欲望に満ちた光ばかりの中にいたらヒカルさんの精神が!!心がおかしくなってしまう!!」

マヤはしゃがみこんでるヒカルをおぶりネオン街を出て、近くにあった公園へと入った。

マヤ「ここのベンチでちょっと待っていてね、ハンカチをぬらしてくるから」
ヒカル「うぅ……ごめんなさい…マヤ姉ぇ…」
マヤ「気にしなくていいのよ、これはヒカルさんのせいじゃないんだから」
ヒカル「でも………やっぱりごめんなさい…」

自分の能力と、それを抑えきれない自分のふがいなさにヒカルは涙を浮かべる。

マヤ「大丈夫…私はそういう素直に自分と向き合えるヒカルが大好きよ」

マヤはヒカルを抱き寄せ、頭をなでながら優しく微笑んだ

マヤ「ヒカルと同じご主人様にお仕えできて…ヒカルと出会えて、私はとっても幸せよ」
ヒカル「マヤ姉ぇ…ありがとう」

そのときヒカルはマヤの肩越しに、他とは違う光を放つ星を見つけた。

ヒカル「あ……あれはご主人様の星!ご主人様がこの近くで星を見てる!」
マヤ「さすがね、ヒカルご主人様の星を感じることができるのはあなたの力だけよ」

それを聞いてヒカルはとてもうれしく、とても誇らしい気持ちになった。
普段はあまり役に立たないこの力も、ご主人様と同じ星空を見ることができるのなら、悪くないものだと…

マヤ「それじゃあ、行きましょうかヒカルさん、案内してくれる?」
ヒカル「うん!もちろんだよ!!」

こうして二人は夜の暗闇を走り出すのであった。
大切なご主人様という光に向かって。

 


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