〜ノエルラントの名花たち〜 「クリスとつぐみの思い出」

つぐみ「おらっ……クリ公、さっさと受け止めねーか!」
クリス「わーー! いや、すぐには無理っすよ」
つぐみ「そんなの気合いでやれよ。おらー!」
クリス「わーっ! ギブ、ギブ!」

ゆうき「相変わらずだな。二人とも……」
ヤパ爺「ほっほっほ、しかしの、二人は昔はとてーも仲が良かったんじゃよ」
ゆうき「そうなのか? それは初耳だな」
ひかり「始めて知りました」
ヤパ爺「どれ、では宮殿に戻って、昔話でもしてさしあげましょう」
なたね「うわーい。どんな話なのかなー♪」
ひとみ「ねーねー、クリスお兄様もつぐみお姉ちゃんも、こっち来て」
つぐみ「え、まだクリスを特訓中なんだけど」
クリス「あー、良かった良かった。行きますいきます♪」
つぐみ「後でもう一回トレーニングだからな」
クリス「うう……」

全員で宮殿のリビングに戻り、ヤパ爺は話を始めました。

ヤパ爺「それは、クリス公太子が6歳のころじゃった……」

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当時、クリス公太子は6歳。
ノエル公にとって唯一の男子ということで、それはそれは大切にされていました。
歳の近い姉妹たちとも、日々仲良くやっていました。

しかし、クリスにとって姉妹たちの中でも一番ウマが合ったのは、つぐみでした。

つぐみ「そらっ……今度はオレが鬼だぞー!」
クリス「あははっ……あはは……こっちだよーつぐみ姉!」

がしっ

つぐみ「つーかまーえたぞぉ〜♪」
クリス「あははっ、つかまっちゃったーい♪」

ひときしり遊び終え、二人で芝生の上に寝転び、お互いにこう気持ちを伝え合うのでした。

クリス「あのねあのねー。ボク、つぐみ姉のこと、だぁ〜〜〜い好き☆

つぐみ「オレも、クリスのことはだいだいだいだいだぁ〜〜〜い好きだーーー!

という風に、自分の他は皆女の子という中で、唯一男勝りなつぐみは、いわば男兄弟代わりとでもいいましょうか、クリスはつぐみと一番気が合い、二人で元気に庭園で遊ぶことが多かったのです。

しかし……

ある日、ノエル公の子供たちの教育係であるなのは先生が、慌ててノエル公のところへやってきます。

なのは「大変です。陛下、これをみてください」

それは、「将来何になりたいか」というテーマで書かれたクリス公太子の作文でした。そこには、こうあったのです。

ボクは、将来8人のおヨメさんが、ほしーです!!

し〜〜〜〜ん……辺りに静寂が広がります。

そして、ノエル公が一言。

ノエル公「ボクだって、4人なのに……」

ズコッ!(皆がずっこける音)

なのは「陛下、問題はそこではありません! 本来、そこにはノエル公を継ぐ後継者としての志が書かれるべきところ。それを……」
ノエル公「まぁ、まだクリスもまだ6歳だし。今はまだしょうがないんじゃないかなぁ」
ハルヒ妃「いいえ、あなた。確かに、クリスの甘えん坊ぶりといったら、少々が度が過ぎています」
ミズキ妃「確かに……前から思っていたけど、ちょっと普通のレベルをこえてるよね」
シーマ妃「では、家族会議を行った方が良さそうですね」

ハルヒ妃「えー、それでは。議長を務めさせて頂くハルヒです。皆さん、クリスの今まで立ち振る舞い、気になったことはありますか?」

まゆり「それはもう……」
ミズキ妃「たくさん……」
シーマ妃「皆で例を挙げていきましょうか……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クリス「母上〜一緒に遊んで〜〜♪」
ハルヒ妃「え〜、今忙しいのに……」

クリス「ミズキ母上〜だっこして〜〜〜♪」
ミズキ妃「え? あなた6歳にもなって……」

クリス「シーマ母上〜頭なでなでして〜〜〜♪」
シーマ妃「え、こう……でいいのですか?」

クリス「キリカ母上〜一緒に本読んで〜〜〜♪」
キリカ妃「え、わかりました。じゃあ一緒に読みましょう」

クリス「まゆり姉上〜〜〜ひざまくらして〜〜〜♪」
まゆり公女「え? もう、しかたがないですね」

クリス「みさき姉上〜〜〜一緒に本読んで〜〜〜♪」
みさき公女「え? さっきお母様といっしょに……」

クリス「つぐみ姉〜〜〜♪」(だきつく)
つぐみ「おーおーったく、しょーがねーなぁ♪」

クリス「あすか姉上ぴょん〜〜〜☆」(スカートをめくる)
あすか「!!!きゃっ!!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

まゆり「全部、甘えているところですね」
シーマ妃「……思い当たること多すぎて……(汗)」
ハルヒ妃「このままいったら……クリスはきちんとしたノエル公の後継者になれないかもしれません。どうにかして、あの甘えん坊をやめさせて、男らしくさせなくては……」

ミズキ妃「誰か名案ある?」
シーマ妃「みんなで厳しく接するとか……」
まゆり「そうしたいのですが、ああやって来られるとつい……」
みさき「構ってあげざるをえないというか……」
ハルヒ妃「つい、構ってあげてしまう……クリスの一種の天性みたいなものなのかしら」

「「う〜〜ん」」

名案が浮かばすに黙り込む面々。
と、その沈黙をつぐみが破りました。

つぐみ「オ、オレが・・・オレがなんとかするぜっ!!

皆「つ、つぐみちゃん?」

そういうと、つぐみは外に飛び出していきました。

 

クリス「わーい、つぐみ姉〜〜〜〜♪」

つぐみを見つけるやすぐに抱きついてくるクリス。そこで、つぐみは今まで取った事も無い行動に出るのです。

ボカッ!

クリス「わっ、痛い!」
つぐみ「い、いいか! クリス! これからのオレはな。今までみたいに優しくないぞ。お前はいずれ父上の後をつぐんだ。もっとしっかりしろ!」
クリス「えっ……ふえぇ……」

クリスは涙を浮かべて、建物の外へ走って逃げていきました。

クリス「うわぁ〜〜〜ん、つぐみ姉が、つぐみ姉がぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」

それを見送ると、つぐみは目に涙を浮かべながら、拳を固めていました。
「クリス……今分かってくれとは言わない。お前が立派な公太子になれるまで……オレはこれからずっとお前に厳しく接するからな。でも……いつか分かってくれ……」

つぐみ「本当は、オレはいつまでも、お前が大好きなんだぁーーーー!!!

つぐみの叫びは、走り去っていったクリスの耳に届く事はありませんでした。

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ヤパ爺「と、いうお話じゃったのさ♪」

つぐみ「いや、そんなの覚えてねーぞ! オレがクリスにそんなことーー!!」
クリス「そーだそーだ! ジッちゃん、ボク記憶にないぞ! ボクがつぐみ姉に甘えた記憶なんてーー!」
ヤパ爺「二人とも、恥ずかしがり屋じゃのう☆ ワシはしっかり覚えておるが」
まゆり「確かに……昔、二人は仲が良かった記憶が、おぼろげながらありますわ」
みさき「良いことですね♪ いまでもそうすればいいのに……」
つぐみ「覚えてねー、全然覚えてねーorz」
クリス「いやー、でも、つぐみ姉がそんなにボクの事を好いてくれていたとは……うんうん、いやこれもボクの人徳のなせる技カナ?」
つぐみ「そんなことあるわけねーだろ! コノーーーー!!!」
クリス「パブロッ!」(窓を突き破り庭園の方へ飛んでいく)

ひとみ「あ、クリスお兄さんが飛んでっちゃった……(汗)」
ゆうき「しかしな……クリス兄さまがなぜ8人の嫁を貰いたがっているのか。ある意味、見当がついたぞ」
なたね「えー、どうしてなの?」
ゆうき「みんな分からんのか。この人たちを見ろー!」

ミズキ妃 「え?」     ←1人目
キリカ妃 「は?」     ←2人目
シーマ妃 「ええ?」    ←3人目
ハルヒ妃 「なんですか?」 ←4人目
まゆり「いったい・・・」 ←5人目
みさき「——え?」    ←6人目
あすか「なんなんでしょう」←7人目
つぐみ「なんなんだよ」  ←8人目

なたね「あ、そっかー。なんとなく分かった!」
ひかり「私も……分かった気がします。」
ゆうき「まぁ、憶測にすぎんがな。真相は本人しかしらん」
つぐみ「くだらねー。オレはもうトレーニングに行くぜ。じゃあな!」

まゆり「ああ、怒ってつぐみが出て行ってしまいましたね」
なたね「もう、二人とも仲の良かったあの頃のこと、本当に覚えてないのかなぁ」
みさき「そんなことないですよ。今でも……きっと……」

(庭園にて)

クリス「イテテ……つぐみ姉ったら、本気で殴り飛ばすんだもの。命がいくつ合ってもたりやしな……」
つぐみ「おい、クリ公……」
クリス「つぐみ姉?」
つぐみ「いや、クリス……はやく立派な公太子になれよな。そうでないと……」
クリス「そうでないと……?」
つぐみ「な、なんでもねぇ……」
クリス「なんだよー、気になるじゃないすか」
つぐみ「なんでもねぇよ! バーカ!」

といって、つぐみは走り去っていきました。

つぐみ(やっぱり、いつまでたってもクリ公はクリ公だ!)

今となっては、なかなか素直になれないつぐみなのでした。

おしまい   


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