夢追い虫カルテットシリーズ

VOL.0「プロローグ・ある青年に舞い降りたキセキ」

ここは日本の某所。夕暮れの中をトボトボと歩く青年がいた。
彼の名は日高光彦。子供のころは昆虫学者輪目指していたが、生来の気の弱さがたたり、また成績が振るわないこともあって高校時代でその夢をあきらめていた。
その後、なんとなく某大学で四年を過ごした後に某企業に就職するもあっさりと倒産、その後はフリーターをして食いつないでいた。
光彦は、こんな状況の中で夢や希望を失っていたようだった。
そんな彼の目に、ある物体が飛び込んできた。

(何だろうか?)

それは、ピカピカと輝く石であった。
いつもだったら見逃すところであったが、何か石に「拾ってくれ!」と言われたような気がした光彦は、その石を家に持ち帰った。
帰宅後、光彦は家で石を磨くことにした。すると、突如石が輝き出した。
そして何と、二人のかわいい少女が出現したのである!

あすか「…こんにちは。」
ひとみ「やっと会えましたね、ご主人様!」

光彦は驚き、そして恐る恐る声を出した。

光彦「誰?」

すると、少女たちは答えた。

ひとみ「十五年前、アリに飴を与えたことをおぼえているでしょうか?」
光彦「(しばし考え)ああ、そんなこともあったねえ。」
ひとみ「実は、あたしはその時のアリなのです。」
あすか「…同じく…私も…十七年前に…命を救っていただいた…ゴキブリ…なのです。」
光彦「ふーん、なるほど…ってえっ?」

光彦には、目の前の事態が信じられなかった。しかし、いきなり少女たちが出現したという事実は、そうでもしなければ説明できない。

ひとみ「あたし達はご主人様をお守りするために『めいどの世界』からやって来ました。」
あすか「これからは…ずっと一緒です…。」
光彦「あ、ああ…よろしく。」

こうして、光彦と、二人の守護天使との生活が始まったのである。
二人との生活に光彦が慣れはじめたころ、再び石が光りだし、今度は一人の少女が出現した。

みゆう「ご主人様!」

その少女は、そう叫ぶといきなり光彦に抱きついた。

みゆう「あたしは、十六年前に血を吸わせてもらったカなの!
    ご主人様、あたしね、ご主人様との赤ちゃんつくるね!」

その言葉を聞いたひとみとあすかの顔が引きつった。

ひとみ「それは聞き捨てならないセリフですね。」
あすか「抜け駆けは…いけませんよ…。」
みゆう「何よ地味な真っ黒黒すけのくせに!」
ひとみ「なんですって!」

こうして、三人の口論が始まった。
一時間後、どうやらまとまったらしい。

みゆう「分かりました、赤ちゃんはあきらめます。でもここに置いてください。
    あたし、ご主人様のそばにいたいんです。」
ひとみ「あたしからもお願いします。」
あすか「…わたし…からも…。」
光彦「まあ、断る理由も無いし…これからよろしく。」

こうして、守護天使は三人に増えた。
三人との生活はしばらく円満に続いたが、しばらくすると、三人が心の空白を訴え始めた。
だが光彦にはどうすることも出来なかった。

そんなある日、光彦は夢を見た。

(そう言えば…僕小さいころカイコを寄生バエに殺されて泣いたっけ。それ以来それが心の傷になって虫が飼えなくなったなあ…。)

その時,枕もとで呼びかける声がした。

まゆり「…様、ご主人様。」

見ると、和服姿の少女が光彦の枕もとにいた。

まゆり「ご主人様、よく思い出してくれましたね。おかげでここに帰ってこられましたわ。」

その時、すでに転生していた三人が起き出してきた。

ひとみ「何か、心のスキマが埋まったような気がします。」
みゆう「仲間が増えて、うれしいの。」
まゆり「ご主人様のもとに転生するのはわたくしが最後です。これからは四人でお守りしますから、よろしくお願いしますね。」
光彦「こちらこそ!」

こうして、光彦と夢追い虫カルテットとの共同生活が始まったのである。
光彦は、失っていた心の張りを取り戻した。そして,何とか毎日を生きていく気力がわいたのである。

おわり

 

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