真吾「CDドラマ、H.A.P」
千里「素直になれなくて・・・・」
私の名は千里眼(ちさとまこ)。
元プロボクサー千里悟(ちさとさとる)とプロジャーナリスト千里真実(ちさとまみ)の長女。
あと、プロボクサー候補で弟の千里一歩(ちさといっぽ)の計4人家族。
何でも取材の関係で知り合い、そのまま結婚したそうなのだが、私にとってはそんな家柄はどうだっていい。
ただ私自身やりたい事をやってるだけなんだ・・・・
そう、ただやりたい事を・・・・
でも・・・そういえばお母さんって言わなくなって何年経ったっけ?
何年・・・だったかな?
キーン コーン カーン コーン・・・・
真吾「千里・・・オイ、千里!」
千里「うーん、セールスなら間に合ってまーす・・・・」
真吾「・・・千里っ!コラッ、起きろ!!」
千里「んっ・・・んー?何だ真吾か、何か用?」
真吾「何か用?(声マネ)じゃねーだろ!もう講義終わっちまったぞ」
千里「あー、そっか・・・寝てたんだ」
真吾「そうそう」
千里「じゃ、帰ろっと」
ガタッ
真吾「オ、オイ!待てや!」
コツコツコツコツ
千里「ちょっと、何付いて来てんのよ、あんたんちはすぐ近くでしょ?」
真吾「別にええがな、一緒に帰りたいんやから」
千里「お断りします、隣歩かれて妙な噂されたらたまったもんじゃないわ」
真吾「あーそうですか!じゃ離れてやるよ、離れてやりますとも」
千里「早くあっち行け、シッシッ!」
真吾「そこまで言うか・・・・じゃあな」
ちゃーらーちゃららちゃーららららー♪(天使のしっぽ)
真吾「おっ?」
千里「電話?」
真吾「いや、メールや」
ピッ
真吾「・・・・ふんふん、そっか・・・」
パタン
千里「誰から?」
真吾「母さんからや、就活とかで大変だろうけど、たまには連絡入れろってさ」
千里「ふーん・・・」
真吾「んじゃな」
千里「・・・・真吾」
真吾「ん?」
千里「あんたは・・・『母さん』に期待されているのよね」
真吾「ハァ、何やて?」
千里「・・・何でもなーい」
タッタッタッタッタ・・・
真吾「・・・何なんや?」
ワイワイ キャッキャッ
カシャッ カシャッ カシャッ
千里「公園の風景を撮るのも随分久しぶりよねぇ」
チチチチチ・・・・
千里「あ、あの木に止まってる鳥なんていいわね」
ジー・・・・
千里「動くなよー・・・」
声「お母さーん!」
千里「!」
子供「今日のご飯なーに?」
母親「今日はトモくんの大好きなハンバークよ」
子供「わーい、やったー!」
千里「・・・・逃げちゃった、ハア」
ドサッ
千里「ふー・・・こんな時はベンチで一休みに限るわ」
千里「・・・今日は何でこんなにも気持ちが引っ掛かるのかな」
・
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・
・
・
4年前
カキーン!
オー! ワーッ! キャー!
千里「・・・ったく取材の助手を任せてくれるって聞いたから付いてきたのに、ただの高校野球じゃない」
カシャッ カシャッ
千里「・・・アイツもこんな取材で満足してんのかな?こんな事だからいつまでたってもヘッポコジャーナリストなのよ」
真実「・・・・ちょっと」
千里「な、何!?」
千里(ヤバッ!聞こえてた?)
スッ・・・
千里「な、何?」
真実「撮ってみなさい」
千里「・・・ハァ?」
真実「いいから」
千里「・・・・・・?」
カシャッ カシャッ カシャッ
数日後
ブウウーンッ!(車の音)
千里「・・・で、今日はどこの取材?」
真実「・・・・・」
千里「・・・・ちょっと?聞いてんの!」
パサッ
千里「ん?何、この封筒」
真実「見てみなさい」
・・・カサッ
千里「ん、何この写真?笑ってるヤツの写真だけど・・・」
真実「・・・あなたには、城戸秀一がそう見えてたのよ」
千里「・・・・あ」
真実「写真とは・・・そういうものなの」
千里「じゃあこのバット構えてキリッとしてる城戸秀一は・・・」
真実「私が取ったものよ、それが何か?」
千里「・・・別に」
こんな事じゃ、いつまで経ってもアイツに勝てやしない・・・・
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・
・
・
いつの間にか「母」は「私の母」では無くなっていた
真吾「母さんからや、就活とかで大変だろうけど、たまには連絡入れろってさ」
真吾、あんたは・・・『母さん』に期待されているのよね。
でも・・・私にとって千里真実は「師」?それとも・・・「ライバル」?
一歩『親子だからね、母さんと姉さんのやってる事ってよく似てるよ』
真実『迷惑よ。私の真似事ばかりするから、全く進歩が見えないわ』
千里『私だって迷惑よ!』
私は、期待なんかされていない
そう言いながら、私の気持ちは嬉しさと苛立ちでいっぱいになる
どちらが本当の私なのか、私自身わからないでいるんだ・・・
かすみ「そんな事はないと思いますよ」
千里「へ?・・・か、かすみん!?」
かすみ「こ、こんにちは・・・千里さん」
千里「ど、どしたの?こんなトコで」
かすみ「夕飯のお買い物をしてたんです、そしたら公園で千里さんが何かブツブツ話してるのを見かけて・・・」
千里「え?こ、声出してた?」
かすみ「はい」
千里「う、うう・・・・」
かすみ「あの、千里さん・・・本当はお母様の事、大事に思っているんでしょう?尊敬しているんですよね、だから・・・」
千里「バ、バカ!そんなわけ無いじゃない!」
かすみ「フフッ、そうですか?」
強がり・・・
・
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・
・
・
私の誕生日・・・
今日は大事な日だったのに、家族だったら忘れる日じゃないのに
幼い千里「おかあ・・・さん・・・おかあさん・・・どこにいるの?」
真実「今、原稿をまとめてる所だから、後でね・・・」
幼い千里「・・・・」
真実「もう少ししたら一段落着くから、先に父さんと一歩と一緒に待ってなさい・・・・」
おかあさん・・・今日は2人ともジムに行ってるんだよ、忘れちゃったの?
・・・ねえ、もう少しっていつ?明日なの?それとも明日の明日?
昔は守ってくれたのに・・・昔は支えてくれたのに・・・
いつまで・・・いつまで待てばいいの?
真実「あなたももう子供じゃないわ、色々と自分でできるでしょう」
もうお母さんって呼んじゃダメなの?
一体いつから私達は家族じゃなくなったの?
いつになったら甘えていいの?
いつになったら娘として扱ってくれるの?
それともあなたを追い抜かないとダメなの?
・
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・
・
・
かすみ「千里さん・・・・」
千里「!・・・ああ、メンゴメンゴ、私ったらまた・・・」
かすみ「悩んでいるのなら、ご主人様や私達に相談してくださいね」(ニッコリ)
千里「ハァ?何言ってんの?私は別に・・・・」
かすみ「家族でも話さなければダメな事だってありますから、それがどんな簡単な事でも・・・」
千里「・・・そうだね、ありがと」
スクッ
千里「さて、いい加減に家に帰ろっかな」
かすみ「はい、お気を付けて」
信じるだけじゃダメなんだ・・・伝えたい気持ちと口に出す勇気
必要なものはまだいっぱいあるんだな・・・・
だって・・・言わなくてもわかる事ってそんなにある訳無いもんね・・・
千里「・・・・・」
・・・・カチャ ピ ポ パ
ツルルルル・・・・カチャ
千里「・・・母さん?私、マコ」
いつかきっと・・・素直に向き合えるようになるよね
fin...