Legend of Quel

第三部(完結編) 最終話

特殊機動装甲車Gストライカーの中でRynexは、ブウロから届いたアクシオン・復讐鬼に関する調査データを整理していた。

これまでは、封印されながらも大邪神がジャミングをかけてアクシオンや復讐鬼に関する情報収集を妨害していたため、やっと収拾できた僅かなデータはどれも間接的かつ不完全であり、そこから導かれる推察も決め手にかけるものや見当違いなものも多かった。
が、大邪神が滅びジャミングが解けた事でその後の調査が一気に進んだのである。
その結果、アクシオンや復讐鬼のルーツにつき次のような仮説が導き出された。

<アクシオン>
ビッグバンで宇宙が誕生するよりもはるか昔、全ての次元の頂点に立つ最高位の別次元において
根源的な『何か』が2つに分かれてアクシオンの『力の素』が2つ誕生し、1つは『正』、1つは『負』と呼ばれた。
この区別はあくまでも便宜上3次元の概念にあてはめたものであり、3次元における正と負の概念とは全く別次元の領域である。
我々の知る言葉で表せば、混沌(カオス)から分化したようなものと考えれば割と近いかもしれない。
もっとも、おそらくは混沌(カオス)の概念すらもはるかに超越しているだろうが。

そもそもアクシオンとはその『正』の力を以って大邪神ガイナギロスに対抗するために『正』の『力の素』から生み出されたものであり、
『負』の『力の素』はその際に発生した余剰物(要するにゴミ)のようなものにすぎなかったらしい。
ガイナギロスもまた最高位の次元で生み出された存在であり、これに対抗できるのは同じく最高位の存在だけである。
この時既に、『力の素』もガイナギロスも、アクシオンを生み出した者の手に負えない存在となっていたようだ。
『正』の『力の素』はガイナギロスを封印するのに使われた際に粉々に砕け散り、
星の数ほどの欠片は大半が大邪神の力の後遺症により、生み出された次元と共に消滅。
残った欠片があらゆる次元に飛び散り、長い年月の間に生命に似た概念として定着、転生を繰り返す。
アクシオンへの改造とは、生命に似た概念として定着した『力の素』の欠片が本来の力を発揮できるように調整する事である。
なお、過去の調査においてアクシオンとなるためには無償の愛が必要とされていたが、
それは『正』の『力の素』がありとあらゆる『正』の要素を司っていた事からそのように考えれていたのかもしれない。
クゥエル以外のアクシオンは全て『正』の力を持つ(ガドルやギャリド等がその例)。

<復讐鬼>
あらゆる次元の『負』の要素から生まれたとされる復讐鬼だが、それを構成するものがまだ他にもある事が明らかになった。
あらゆる次元から集まった『負』の要素が、大邪神の影響下にある613次元において大邪神の瘴気を多かれ少なかれ受ける事ではじめて復讐鬼となる。
(この瘴気にもジャミングがかけられていた)
これが、613次元が復讐鬼の巣窟たる要因であり、また復讐鬼が美少女ばかりを狙うのは、生贄に純粋な少女の心を求める大邪神の性格を、
形を変えて受け継いでいたためではないかと思われる。
なお、ワーバインが改心できたのは大邪神の影響を受けなかった事が幸いしたようだが、
それでいて他の復讐鬼と戦えるだけの力を持つのは、
おそらくどこかにおいて何らかの形でアクシオンの『力の素』から干渉を受けた事があるものと思われる。
半復讐鬼のようなものだと思われていたが、もしかしたら本当は半アクシオンとでも言うべき存在なのかもしれない。
いずれにせよ、ワーバインにはまだ不明な点が多い。

<クゥエル>
当初の調査では何者かによって意図的に生み出されたと思われていた『負』のアクシオン、クゥエルだったが、
前述の通り、どうやら『負』の『力の素』は『正』の『力の素』が誕生した際に余剰物として生じたものらしい。
この時既に『負』の『力の素』は根源をも超える存在となっており、やはりアクシオンを生み出した者の手に負えなかったようである。
何もかもを滅ぼす危険な存在として隔離・封印されていたが何かの拍子に流出、
気の遠くなるような時を経てありとあらゆる次元という次元を彷徨ううちに巡り巡って3次元の地球に漂着し、
やはり生命に似た概念として定着、転生を繰り返す。
ある時代、カエルとして転生した時に愛という感情を知る。
守護天使クゥエルとしての転生、アクシオンへの改造(調整)を経て全てを滅ぼす力を身につけるが、
皮肉にもその悪しき力が、生きとし生けるもの達を救う結果となった。

 

以上のような内容の後、報告は次のように締めくくられていた。

あれほどの邪悪な力になぜあのような心が宿ったのかは全くもって謎である。
が、あの激闘の日々において『仮面ライダーG3‐XX』は確実に存在していた。
一人の少女を愛し人々の明日のために戦い続けてきた男がいた事を、我々は決して忘れない。
その無償の愛と自己犠牲の勇気に応えるため、人々の明日を守るという彼の志を実現するため、 我々は悲しみを乗り越え前に進まなければならない。

 

Rynex「あれから1ヶ月...早いものですね。」
メ・ギャリド・ギ「......ハヤイ、ハヤイ...」
Rynex「結局あの後、ガドルさん達はそれぞれの担当していた星系や次元に帰って、
ワーバインさんも一緒に行ってしまった...」

 

 

(回想)
Rynex「えっ...?それじゃあ...」
ワーバイン「ああ。俺、あいつと一緒に戦ってみてよくわかったんだ。
俺がまだまだ未熟だって事がな。今までだって大して戦力にならなかったし。」
Rynex「らんさんには言わなくていいのですか?」
ワーバイン「ああ。今らんに会ったら決心が鈍りそうなんでな。Rynex、お前から伝えといてくれ。」
Rynex「...わかりました。ワーバインさんもお気をつけて。」
ワーバイン「そういう事だ。みんな、よろしく頼むぜ。」
使い魔達に挨拶するワーバイン。
ゴ・ガドル・バ「いいだろう、大歓迎じゃ。」
ゴ・ブウロ・グ「こりゃ頼もしいな。」
ゴ・バベル・ダ「今度力比べで勝負しようぜ。」
ゴ・バダー・バ「いや、バイク勝負がいい。」
ゴ・ガメゴ・レ「み~んな仲間!」
ワーバインを歓迎する使い魔達。
6人はカットラスに乗り込み、ワープアウトで別次元へと旅立っていった。
(回想終了)

 

 

Rynex「ギャリドさん、私、るるちゃん達の様子を見てきます。」
メ・ギャリド・ギ「イッテラッシャイ。オキヲツケテ。」

守護天使達の家にて。
らん「わざわざどうもすみません。どうぞ上がって下さい。」
Rynex「いえいえ、こちらこそいつも押しかけてしまってすいません。お邪魔します。」
リビングへ通され、そこで話をする事に。

Rynex「るるちゃんの様子はどうですか?」
らん「それが、ずうっと外で座り込んだまま動かないのです。」
くるみ「るるちゃん、あの日からちっとも笑わなくなったの...時々泣きそうな顔するの...」
あゆみ「時々たまみちゃんが側に行きますけど、やはりショックが大きかったみたいですわね。」
つばさ「たまみだって、本当はまだ凄く辛いはずなのに...」
Rynex「そうですよね...私だって、未だに...」

 

 

(回想)
るる「あああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」
G3を失い、ご主人様に泣きつくるる。

その時Rynexは、

Rynex「G3様......あなたは...最後まで、立派な...仮面ライダーだった......!」

がくっと膝をついて涙ぐむ。その後には両親がいた。
ダイデ「Rynex、お前の主様は本当に立派だった。」
ライザ「これは、あなたにとっても誇りにしていい事よ。」

両親の言葉に振り向くRynex。

Rynex「父さん......母さん......私...私......」

Rynexは、泣きながら母親の胸に飛び込む。

Rynex「嫌だよ...私、G3様と別れたくない......
   別れたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!」

G3はもういない。長い間連れ添ってきたRynexにとって、
それは耐えがたい事実として重く重くのしかかるのだった...

Rynexの泣き声につられたかのように、たまみも激しく目を濡らした。

たまみ「みんなで笑いあえる明日にしてくれるって言ったのに......
『みんな』の中には、あなただって、含まれてるのよ!!!
それなのに...あなたがいなくなって、笑顔になれるわけないじゃない......」

涙でメガネが曇る。

たまみ「あなたはバカよ......!!!本当のバカよ!!!!!」
濡れたメガネを落とし、両手で顔を覆って号泣するたまみだった...
(回想終了)

 

 

 

Rynex(母さんは誇りにしていいって言ってくれたけど...)

これまでのクゥエルの苦悩がRynexの脳裏をよぎる。

Rynex(私、そんなに偉くないよ...)

ゆき「結局、G3さんの明日を守れる者は誰もいなかったのでしょうか...」
あかね「これが運命だなんて、思いたくないな...」

家の外では、るるが塞ぎこんだように体を丸めて座っていた。
手にはG3から渡されたGK‐06を持っている。
そこへ、たまみがやってきた。

たまみ「るるちゃん...まだG3さんの事待ってるんだ。」
るる「うん。じーすいーたん、るると約束したもん!必ず戻ってくるって、約束したもん!
じーすいーたんは、きっと帰ってくるもん!」

たまみは、るるの話を黙って聞いていた。そして、

たまみ「ねえ、るるちゃん。だったら、ずっとこんな所にいるよりも、もっと家の事やったり、
ご飯食べたりしてちゃんとした生活をしましょう。

もしG3さんが帰ってきた時、るるちゃんが元気なかったら心配するでしょ?」

るる「.........」
たまみ「ねっ?」
るる「......うん。るる、ちゃんとする!それじゃあ、ご主人たまのために何かお手伝いするお!」

2人が家に入ろうとしたその時、るるはどこからか妙な音を聞いたような気がした。

ゲコゲコゲコ...

るるはその音の正体に気づき、突然駆け出した。

るる「るる、知ってる!このカエルさんの声、知ってる!」
たまみ「あっ!るるちゃん、待って!一体どうしたんですか!?」

たまみも後を追う。

Rynex「るるちゃん......?ま、まさか...!!!」

走っていくるる達を見たRynexも駆け出す。
他の守護天使達とご主人様も、わけがわからぬといった表情で後を追う。

近くの公園にたどり着くと、るるはすぐ側の茂みに座り込んだ。
その視線の先には一匹のカエルがいた。それも、トノサマガエルが...

カエル「ゲコゲコ...ゲコゲコ...」
カエルは、るるを見て嬉しそうに跳びはねていた。そこへたまみとRynex、それに他のみんなもやってくる。
たまみ「カエル......?こ、これって......」
Rynex「もしかして......!!!」

 

 

 

天界では、その様子をメガミ様が見ていた。ひつ爺、ムサ婆も一緒である。

メガミ様「ごめんなさい、クゥエル...私にできるのはこれで精一杯です...」
ひつ爺「しかし、これで奴も普通の幸せを手に入れたんじゃなぁぁ。」
ムサ婆「トノサマガエルに逆戻りして、これまでの分を取り戻すがよかろうて。
   あやつにはその資格がある。十分すぎるほどな。」

3人の見る先には、クゥエルとの再会を喜ぶるる達の姿があった。

メガミ様「クゥエル...幸せになるのですよ......」

その後、クゥエルはRynexと共に住み、るる達と交流を持ちながら幸せに暮らしている。

 

こうして、青き勇者の戦いは終わった。
『G3‐XX』はもう、この世にはいない。
だが、本当の『仮面ライダー』は誰の心の中にもいるのかも知れない。

そう...もしかしたら、あなたも......

 

 

「仮面ライダーG3‐XX」

Mission all over

 

 

生きとし生ける者たちに、輝ける明日があらん事を

FIN


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