この作品を、全てのPETS・しっぽファン、そして我が朋友M氏に捧ぐ...
そこがどこなのかはわからない。が、静寂の中、2つの怪しげな人影が対峙していた。
1つは甲羅を背負ったスッポンのような怪人、もう1つは青い鎧に身を固めた仮面の男である。
怪人は、全身を震わせて脂汗にまみれながら恐怖の表情を作り上げていた。
それに対して仮面の男は、同じく全身を震わせていたが、怪人のそれとは様子が違っていた。
拳を異様なまでに強く握り締め、唸り声をあげている。
もし彼が仮面をつけていなかったら、歯を食いしばって怒りを露わにしているのが見て取れただろう。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!
仮面の男が怒号と共に怪人に向かって突撃していく。
怪人は助けてくれと命乞いをしながら背を向けて逃げ出そうとするが、
仮面の男はそんな怪人を容赦なくふん掴み、ありったけの憎悪を込めて拳を怪人の脳天に叩き込む。
グッシャアアアアアアアアアアアッ!!!!!
気味の悪い音とともに怪人は頭から全身にかけて弾け跳んで消えた。
(!!!!!)
同時に、先ほどまでは何もなかったと思われる場所で建物が崩れ始めた。
それも、1つではない。無数にだ。根元の方から砂煙を上げながら、地面に沈んでいくかのように...
(な、何......!?)
さらにその後、周囲のあちこちから爆炎が上がり、轟音と共に地が裂け、
全てが地の底へと吸い込まれていく。家も、人も、花も、木も、動物も、全てが.........
(違う...)
やがて全てが無に帰し、後に残るのは果てしなく広がる闇と静寂、そして耐えがたい孤独感であった......
(違う!俺は...俺はこんな事がしたいんじゃない!!!
こんなの、俺じゃない...!俺じゃないんだああああああああああああッ!!!!!!!)
ガバアッ!!!
勢いよく飛び起きたのは、青い鎧と仮面の男、すなわち我々の知っている仮面ライダーG3‐XXである。
G3‐XX「あ、あれ...?」
ゆっくりとまわりを見渡してみると、そこはG3にとって実に見慣れたGストライカーの中である。
G3‐XX「そっか。俺、いつの間にか眠っちまったんだな。くそっ、またあの夢かよ!何度見てもいやな夢だぜ...」
夢の余韻がまだ残っているせいで、全身がまだ震えている。
G3‐XX「......しかしどうも変だ。俺は改造手術を受けて以来、睡眠なんぞ取る
事はなかった。でもここ数ヶ月、夜になるとなぜか眠っちまう。普通の人間
と同じように...」
疑問を口にしながら、寝る前にはなかったはずの毛布をじっと見つめていると、その毛布をかけた張本人がやってきた。
風邪をひくことのないG3には別に毛布など必要ないのだが、これも気づかいなのだろう。
Rynex「G3様、おはようございます。」
G3‐XX「お、おお、Rynex。」
G3は、体の震えを抑えながら平静を装う。挨拶のぎこちないG3の様子から、今日も悪夢に苛まれていた事をRynexは察知していた。
が、気まずくなるのを恐れ、その事には互いにあえて触れないようにしていた。そして、最近なぜかG3が眠くなっている事にも...
Rynex「ところでG3様、今日が何の日だか覚えていますか?」
G3‐XX「当然!必然!あたりきしゃりきじゃい!!!この俺がるるとのデートを
忘れるはずがなかろうがよオオオオオッ!!!!!」
Rynex「フフフ、そうですよね。それでこそG3様です。」
るるの話題で安心する2人。その日はG3がるると2人きりでデートをする約束をしていたのだ。
実は、夢魔の世界から戻ってからのここ数ヶ月、G3が毎晩のように悪夢にうなされているのを見かねたRynexがるる達のところへ行き、
このデートの約束を取り付けたのだ。るるならG3の不安を解消とまではいかずとも、かなり緩和できるのではないかと考えて。
そんなわけで、毎度の通りグランチェイサーにまたがるG3。
G3‐XX「そういえば、ここ最近復讐鬼も出て来ねえな。毎日のように獲物を探してい
た頃が遠い昔の事みたいだぜ。」
Rynex「ええ。こんな日が、このままずっと続くといいですね。」
G3‐XX「......あ、そうだ。Rynex。」
Rynex「はい、何でしょう?」
バイクのエンジンをブウンとふかすG3。
G3‐XX「.........えっと、その...ありがとな。」
照れくさそうに礼を言うG3。
Rynex「いえいえ、私はあなたの使い魔です。G3様のお望みくらいわかりますよ。」
G3‐XX「.........毛布もな...」
ガチャッ!ブロロロロロロロ......
そう言ってすぐバイクを走らせていく。そんなG3の後姿を見送るRynexの表情は、優しさの陰に罪悪感を残していた。
Rynex「......私にできるのは、こんな事くらいしかないです...メガミ様...
私、どうしたらいいのでしょう......」