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第7話「すれ違う心」

 私は天使。それそのものではなく、彼等の姿を象ったただの石の塊。
 私は石。でも冷たい体の奥には、私という揺らぎ様の無い生きた魂が宿っています。
 私は魂。自分の過去すら覚えていない、羽を失った鳥のような天使です。
 私は天使。昨日、とても気になる事がありました。

 真純という少女。私は初めてあの子の名前を知りました。
 何時の頃からでしょうか、彼女は私が形作られる過程をずっと見守ってくれていました。
 あの子の父親がいない時にだけ……。こっそりと私の居る作業場に足を運んでくれたのです。私のできかけの顔を見て、あの子は優しく微笑みました。

 あの子が……自分の父親を嫌っている事には薄々気付いていました。ですが、私には分かるのです。あの子は父親の創る作品に対してだけは、全く異なる感情を持っているということを。
 作品から、普段見通す事のかなわぬ、父親の内面を探ろうとしていたのかもしれません。
 彼女は、愛情に餓えているのです。

 昨日の彼女はとても脅えていました。以前にも幾度となく同じ事が……。それが、もし彼女の父親に関わる事であるのなら……。
 彼女に光が見いだされる日は来るのでしょうか。

 あの子は、これからもずっと父親と暮らさねばならないのです。


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