私は天使。それそのものではなく、彼等の姿を象ったただの石の塊。
私は石。でも冷たい体の奥には、私という揺らぎ様の無い生きた魂が宿っています。
私は魂。自分の過去すら覚えていない、羽を失った鳥のような天使です。
私は天使。昨日、とても気になる事がありました。
真純という少女。私は初めてあの子の名前を知りました。
何時の頃からでしょうか、彼女は私が形作られる過程をずっと見守ってくれていました。
あの子の父親がいない時にだけ……。こっそりと私の居る作業場に足を運んでくれたのです。私のできかけの顔を見て、あの子は優しく微笑みました。
あの子が……自分の父親を嫌っている事には薄々気付いていました。ですが、私には分かるのです。あの子は父親の創る作品に対してだけは、全く異なる感情を持っているということを。
作品から、普段見通す事のかなわぬ、父親の内面を探ろうとしていたのかもしれません。
彼女は、愛情に餓えているのです。
昨日の彼女はとても脅えていました。以前にも幾度となく同じ事が……。それが、もし彼女の父親に関わる事であるのなら……。
彼女に光が見いだされる日は来るのでしょうか。
あの子は、これからもずっと父親と暮らさねばならないのです。